communicate
インタラクティブパフォーマンス
Touch Designer Dream Studio 肉体 ジャグリング モーションセンサー プロジェクター
幼少期の頃から言語を超えたコミュニケーションに強い関心がある。例えばパントマイムや大道芸、マジックなどをはじめとする技芸は当時の私にも、エンターテインメント性が伝わっていた。その中でもサイレントコメディアンである「がーまるちょば」との出会いは現在の創作テーマに強い影響を与えている。彼らはパフォーマンス中には一切言語を発さない。しかし、彼らは身体と会場の空間を自由自在に扱い、パントマイムを行う。公演が終わると同時に観客は笑いと涙に包まれる。この状況を作ることができるのは、唯一無二の存在であると思い当時の私の心はグッと掴まれた。未知の体験は私を奮い立たせ、見よう見まねで真似をしたことを今でも覚えている。そのようなきっかけから技芸にチャレンジしてみること、出来るようになったものを他の人に見てもらうことは私にとって日常的な行為になった。振り返るとそれは何かを披露するということだけでなく、スポーツで身体を使うことや絵画造形教室で作品を作ってみること。楽しいだけだと思っていたどのような無意識な行為も「自分と他人」が意思疎通を行う為の手段となっていた。
対照に、自分の意思を相手に伝える中で違った解釈が行われることもある。人間同士でもよく起こりうることだが、動物と遭遇した際には一方的に逃げられたり、時に襲われたりもする。そして、最近特に私が解釈の不一致をよく起こす対象は、画像生成AI である。あらかじめ与えられたプロンプトから連想するイメージを度々生成するが、私が解釈するイメージから超越した結果を吐き出す結果に多くの確率で遭遇する。これは伝達ミスなのか、それとも不完全なツールだったのか疑問に思う。もちろん、開発側はソフトウェア上のさまざまな原因を挙げると思うが、この時私は、インターネットと検索ユーザーの関係にも似たような事例が挙げられると思考する。それは、多くのインターネット検索を行う利用者はあらかじめ終着点(気になる事など)に向かう為に利用する事が多いと思うが、その際、終着点に辿り着くまでの「検索プロセス」についてはコミュニケーションが求められる。つまり、インターネットと検索ユーザー間での伝達を行なっていく上で検索結果が表示されるが、この時にも使用者側の伝え方次第では伝達ミスが起こり、求めていた答えと違った検索結果が表示される。なので、インターネット上で検索を行うには求める結果に辿り着くまでのプロセスに教養が必要となる。しかし、上手なコミュニケーションの取り方同様に「上手な検索の仕方」については誰も教えてくれない。近年では人工知能の台頭により、あらかじめユーザーの情報を考慮した上でパーソナライズされたコンテンツに触れる機会が増えている。その一つとしても「Chat GPT」が挙げられる。これまでのインターネット検索はユーザーからの伝達方法に依存し使用者の人間性を無視した検索結果が表示された。しかし、人工知能が導入された「Chat GPT」にはあらかじめユーザーに基づいたデータが一人ひとりの性格に寄り添い、皮が手に馴染むように情報収集が可能になった。このような双方の伝達ミスを限りなく減らし、効率よく人類が結果を収集しているが、その点現状画像生成AI は不完全である。手前にフォーカスが合いが奥にかけてぼやけていくイメージやマテリアルの描き分けなどフォトリアルで「それっぽさ」を作り上げることは非常に得意そうに伺えるが、ライティングや空間、肉体の構造には時に強烈な違和感を覚え、シュルレアリスムを彷彿とさせるイメージを生成する。日頃からカメラを持ち歩き配置や空間意識について考え生活をしている私の感覚は強い拒絶反応を感じながら画像生成ツールに触れた。もちろん、精度はテクノロジーの進歩による時間の問題ではあると思うが、私はこのフォトリアルとは微妙な距離を保つ画像生成AI 着目し不完全な画像とコミュニケーションを取ることを試みた。